『キミとそしてオイラたちと』
目を開けたとき、最初に見たのは可愛い笑顔。
「オイラ魔獣ケット・シー今後とも宜しく…」
「わたし、アズマ ケイ!今後とも宜しく!」
そう言って、人間の女の子は、オイラの手を掴んで、ぶんぶん握手をした。
可愛い子だなとオイラは思った。
オイラたち悪魔は、人間の欲が大好物。
…なんだけど、最近人間の数がへってきたせいで、低級の悪魔とか、生活が大変になってきたんだ。
だからオイラ達は、このイデア・スペースでNABIっていう人間をサポートする仕事についている。
そうすれば、生きていくに必要な、欲のエネルギーやマグネタイトを貰うことが出来るんだ。
凄いシステムだよね。
そして、このケイって女の子が、オイラがこれからサポートする人間、そう、オイラのご主人様。
「よろしくね。ケット・シー」
人間はあっというまに、年を取っていく。
十年なんてあっという間。
ケイはもう22歳と大人になって、オイラと一緒に毎日を精一杯生きている。
あっという間の十年。
だけど、とても長くて楽しかった。
「本当にいいの?」
ケイが言った。
言い出したのはオイラのほう。
隣には新しく入った仲魔達がいた。
「このままじゃ、いけないんだ。
オイラ、ケイとずっと一緒にいたいから」
「ケット・シー…」
ケイは泣いていた。
大丈夫だよ、オイラと君との十年はけっして、消えないから…。
オイラは覚悟を決めて、台の上に上がった。
これから新しく生まれ変わるために。
これは多分、私にとって生まれる前の記憶。
「ケイ!」
小さい男の子が、我が主に向かって、色々なことを話している。
幸せそうに色々なことを…。
その主は、話しかけている男の子同様、とても小さかった。
小さい男の子は、毎日を幸せに過ごしていた。
しかし、月日が経つに連れて、主のほうが男の子の歳を追い抜いていった。
男のこの方は、だんだん成長していく、主を心細い気持ちで眺めている。
主は、成長するにつれて、様々な困難に出会った。
この困難で苦しんでいる主を見ているのが、男の子には辛かった。
子どもであり続けている自分は、このままでは、主の力になれない。
そう考え…。
そして、
私が生まれた。
「どうしたの?」
気がつくと、我が主が心配そうに私を見ていた。
私は笑って、
「夢を見ていました」と。答える。
彼女は笑って、
「夢を見る悪魔って、珍しいのよね。ケット・シーもそうだったわ…」と、懐かしそうに呟いた。
この言葉を聴いて、私の心の片隅で、その男の子が微笑んでいるのが見える。
『幸せですね…』
私は胸に手を当てて呟いた。
これが私の存在理由。
私はこの男の子の願いと共に、彼女と、共に歩くのだから。
ケット・シーは魔獣の種族のなかで一番レベルが低いですが、自らを犠牲をして新しい姿に生まれ変わっても
主人公との思い出が消えることがないケット・シーの主人公を想う強い気持ちにとても感動します。
NINEは過去の作品以上に切り捨てる存在が多すぎましたので、
主人公にどこまでもついて来てくれる仲魔の姿は凄く励まされて、仲魔って最高♪と励まされてましたね。
たってぃさん、ありがとうございます。
>現実空間に戻ります